去る9月25日、第17回咬合フォーラムが杜の都・仙台にて開催されました。今年は、「咬合治療の可能性と展望~健康長寿に向けて~」をテーマに掲げ、加治彰彦先生(東京都開業)、吉松繁人先生(福岡県開業)、赤川安正先生(広島大学名誉教授)という3人の臨床経験豊富な先生方を演者に迎え、また日本顎咬合学会元会長でいらっしゃる菅野博康先生(宮城県開業)に座長の労をいただき、講演が行われました。

加治彰彦先生は、「矯正治療はどの程度健口に貢献するのか?」を演題に、矯正専門医としての観点からご講演いただきました。「矯正治療によりう蝕や歯周病になりづらくなる」といった情報は、本当に正しいのか? また、健口社会を確立するために矯正治療が貢献できるのか? などを、海外留学にて培われた経験をもとに、EBMというフィルターを通し検討されていました。
吉松繁人先生は、「咀嚼機能の回復を目指して~診断と補綴製作の接点~」を演題に、近年、超高齢社会に伴いより注目されている総義歯治療に焦点を当てて講演されていました。先生は、現在行われている総義歯製作システムの有用性を理解しながらも、患者固有の筋骨格系に対し、生理学的、解剖学的により調和のとれた補綴物の装着を目指し、診断方法や治療計画、リハビリテーションの概念など、多くの症例や私見を交えて講演されていました。
赤川安正先生は、「咬合、補綴治療の新しい価値」を演題に、歯科医師自身、または咬合・補綴治療は「健口長寿」に対しどこまで貢献できるのかについて講演されていました。咬合・補綴治療により、損なわれていた「噛む」「食べる」「しゃべる」「飲み込む」ことを回復することで、健康な高齢者は健康長寿を伸ばし、虚弱な高齢者はQOLを改善すること。つまりよく噛める状態を作り、維持していくこと、それが咬合・補綴治療の新しい価値であるということを、ご自身の経験や研究からエビデンスに基づき、熱弁されていました。
そして最後に、3人の先生方とともにディスカッションを行い、盛況のうちに会を終えることができました。学会のテーマでもある、「新・顎咬合学が創る健康長寿」について、より深く議論ができる場になったのではないかと思います。

来年は石川県金沢市にて第18回咬合フォーラムが開催されます。学会が目指す歯科医療に対しての理解を深めあうためにも、より多くの先生方のご参加を期待しております。